ども宇佐美です。
小池知事と山崎一輝都議との間で「豊洲市場の民営化 」をめぐって都議会で以下のようなやりとりがなされたようです。

http://news.tv-asahi.co.jp/news_society/articles/000097361.html  


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山崎議員「先週突如公表された『市場のあり方戦略本部』について、イエスかノーということではないと。民間委託や市場不要論などの議論をされることはありませんね?
小池知事「民営化にいきなり飛ぶという考えは全くございません
山崎議員「『いきなり』ということには、その先には民営化を考えていらっしゃるのですか?」
小池知事「民営化ありきで議論するということではないと明確に申し上げた。そういう点での『いきなり』でございます」
山崎議員「はっきり言ってくださいよ。民間委託、市場不要論などを議論されることはありません?」
小池知事「民営化、それを前提として戦略本部を打ち立てているのではございません。その点だけは、はっきりさせておきたいと思います。」
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回りくどいやりとりではありましたが、小池知事の「民営化に”いきなり”飛ぶという考えは全くない」という答弁が、逆に新たに設置される”市場のあり方戦略本部”で民営化の可能性について議論されることを示唆しています。私自身は最終的に「豊洲市場は民営化すべき」と考えているのですが、この辺制度的には一筋縄には行かないので、簡単に説明したいと思います。

卸売市場制度
(http://www.maff.go.jp/j/shokusan/sijyo/info/pdf/siryo2_01.pdfより)


さて卸売市場に関しては、農水省が所管するその名も卸売市場法において管理されているのですが、この法律の中では、卸売市場として「中央卸売市場」「地方卸売市場」の2類型を定義づけています。日本全国では平成27年末現在で、64の中央卸売市場、1092の地方卸売市場、その他卸売市場法の管理外の小規模な民間卸売市場が多数存在します。まぁ規模の大きいものが中央卸売市場、小さいものが地方卸売市場と考えていただいて大筋としては問題ありません。

それぞれの市場に関する制度的な違いは上の表に示してある通りですが、重要な点は市場の開設主体に関して、
・中央卸売市場は農林水産大臣が許認可権者で、20万人規模以上の地方自治体しか開設が許されていないのに対して、
・地方卸売市場は都道府県知事が許認可権者で、開設の主体が限定されておらず民間企業でも運営可能
という違いがあります。なお現在問題となっている豊洲市場は、中央卸売市場、として開設が予定されており、農水省の第10次中央卸売市場整備計画東京都卸売市場整備計画(第10次)双方に位置付けられています。

そのため現状のままで豊洲市場を民営化することは制度的に不可能です。仮に豊洲市場を文字通り「民営化」するならば、中央卸売市場から地方卸売市場に位置付けを変えて、開設する必要があります。

実際に東京都が今から強引に”いきなり”民営化するとしたら、地方卸売市場への転換にあたって農水省と協議を進め、中央卸売市場整備計画から豊洲を外してもらう必要があるわけですが、豊洲新市場の建設には数百億円規模の国費が投入されているので、東京都が勝手に判断して進めるというわけにはいきません。下手したら政府からの補助金の返還訴訟に繋がりかねません。


なので現実的に豊洲市場の運営に民間の力を用いるとしたら「中央卸売市場の開設自体は東京都が責任を持ち、運営にあたって民間の力を借りる」という「公設民営」方式を取る必要があります。

また中央卸売市場の「公設民営方式」については大阪府で実績があることから、今後この問題の主導権は市場問題PTの小島座長から、上山信一顧問に移っていくことが予測されます。冒頭紹介した議事録の中では、山崎議員はその辺のことをよくわかって「民間委託」という言葉を使っているのですが、おそらく小池知事は制度の詳細を理解しておらず「民営化」という言葉を使っているのだと思います。余談ですが、これに限らず小池知事は土壌汚染対策法などについても制度に関する詳細な議論が不正確ですし、都庁幹部との関係がギクシャクしていることが透けて見えます。


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(http://www.toseikaikaku.metro.tokyo.jp/shijyoupt06/06_shijoukaikei.pdf より)


さてこのようなわけで今後新設される「市場のあり方戦略本部」では、豊洲市場を中心に中央卸売市場の「公設民営」による運営について、検討が進められることが見込まれます。この点については第六回市場問題PTで菊森委員から民間的経営手法の導入という観点から問題提起がされていまして、これは真摯に受け止めて答えるべき内容かと個人的には思っています。ただ他方で市場問題PTには、こうした本質的な課題的に応える力がとてもなく、新たに「市場のあり方戦略本部」が立ち上げられたのではないでしょうか。

いずれにしろ、豊洲市場に関して移転という方向に都が動き始めたことは間違い無く、今後議論は「どのように豊洲市場を運営していくか」ということに移っていくわけで、これ自体は喜ばしいことだとは思っています。

ただこれまで状況をかき回す方向で力を発揮してきた知事が、この混乱した状況をまとめる方向にいきなり面舵をきれるのかどうか、大いに疑問を感じるところです。この点都議会での議論や夏の都議会議員選挙を通じて、都議会議員が混乱を収束する方向に力を発揮して欲しいところです。


ではでは今回はこの辺で。