追記:伊藤ゆう都議に関しては私は以下の記事のように認識を改めたので、本記事を読む方はこちらもご参照ください。
http://usami-noriya.blog.jp/archives/36772587.html

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ども宇佐美です。
ようやく築地市場から豊洲市場への移転が実行され、ホッとすると共に、今後の豊洲市場の発展を願うところです。ただ後ろ向きな意味では、やはりここに至るまでのメディアを巻き込んだ不毛な議論とそれに伴って生じた数千億円規模の損失は風化させてはならないとも思うところです。

そんなことを思いながら、ゴゴスマという番組を見たら相変わらず都民ファーストの会の伊藤ゆう都議が珍妙な理論を展開していたので、改めて豊洲市場をめぐる騒動の論点を彼の発言から振り返りたいと思います。彼のゴゴスマの発言は、川松都議からの

「安全・安心というけれど(安全は前からわかっていたはずで)何を持って安心になったのか。2016年8月30日と今年の7月31日で何が変わったのか?」

という質問を受けての回答で以下のようなものでした。




「①ここ(豊洲)の地歴の問題もありまして、もともとここの地歴は東京ガスの跡地です。今、もともと再検討をしなくても良かったんじゃないか、というご発言もありましたけれども、そうじゃなくてですね、東京ガスの跡地なので元々の土壌汚染対策法ができる前の調査では、まだまだ見つけられてない汚染があるんじゃないかと。で、この間に実は土壌汚染対策法という新しい法律ができました。なので新しい法律に基づく調査をやった方がいいとのことで、これは石原さんもお認めになって、結果43000倍のベンゼンだ、あるいはシアンだ、というものがでてきたわけですね

 ②で、質問にあった安全だ安心だという議論ですがね、まさに43000倍というこれ驚異的な有害物質ですよ。こんなところに市場は作れないという当時の議論があって、850億円以上かけて土壌汚染対策工事を行いました

 ③その工事の中で、盛り土を盛るというのは最低条件なんです。ですから、この最低条件を満たしてなくても問題なかったというのは、これね、大きな問題発言だと思いますよ。」


以下大きく3つのパートで構成されている伊藤ゆう都議の発言の是非について簡単に検証していく。

<①に関して:>

→この部分は、豊洲の土壌汚染調査が行われた経緯について述べているものである。要旨としては、「土壌汚染対策法の制定・施行(2003年2月)を受けて、石原知事も必要性を認めて、2008年2月から4月にかけて本格的な土壌汚染調査をやったら、大規模な汚染が見つかった。」というところであろう。
→ところがこれは重要な点が抜けていて、当時国政民主党は参議院で過半数の議席を握っており、国会はねじれ国会の状態にあった。これを利用して民主党は実質的に豊洲移転潰しのために2007年12月に土壌汚染対策法改正案を提出して、都政に圧力をかけた。それまで石原知事は、東京ガス等が行なった表層土壌調査で十分、というスタンスを取っていたが、このような状況では詳細調査に踏み切らざるを得なくなった。つまり実質石原知事に詳細調査をやらせたのは伊藤ゆう都議が所属していた都議会民主党そのものである。


<②に関して>

→続いてここは土壌汚染が見つかった後の対応について述べている、環境省の資料にあるように土壌汚染対策に関しては、地下水等経由の摂取、土壌が舞うことによる直接摂取、の二つのリスクを封じることが重要になる。したがって土壌汚染対策に対しては摂取経路を断つことが本来の対応で、汚染除去をする必要は本来無く、むしろ環境省は汚染除去を必ずしも推奨していない。(除去された汚染土がどこかに集積して健康被害につながりかねないため。)
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→したがって汚染土壌の摂取経路を断つために必要な施策を講じること(地下水を使わない、コンクリで遮断する、など)が本来の意味での「ワイズスペンディング」なのであろうが、これに反して都議会民主党は、今も伊藤ゆう都議が続けるように、「43000倍というこれ驚異的な有害物質」と言った言葉で執拗に土壌汚染の存在を強い言葉で強調し、風評を撒き散らした。その結果、都民の不安は高まり、東京都は本来は必要のない850億円もの土壌汚染対策工事をやらざるを得なくなった。
→これに付言すれば都議会維新のやながせ議員もかつては民主党に所属し、伊藤議員と同じ立場であったが、正式に豊洲への移転が決まったことを受け、立場を改め、今では正確な情報を伝えることに腐心している。一方の伊藤都議は未だに風評を撒き散らし続けている。どちらが正しい対応かはいうまでもない。


<③に関して>

→最後に「盛り土」の点である。②で述べたように、この土壌汚染対策はそもそも「食の安全」の観点からは不必要なものであり、科学的な観点からは「最低限必要」な盛り土工事はとっくの昔(市場用地引き渡し時)に終えている。したがってその後に「最低限必要」なものがあるとすれば、政治的に必要、ということなのであろう。そもそも不必要な工事を、最低限必要、などという状況にすることが都政のレベルの低さ、愚かさを象徴しているが、実際に盛り土がされていて地下ピットが無い状態の方が問題が大きいことは、以下のように市場問題PTで佐藤尚巳委員が指摘している。専門家の目から見れば、盛り土が敷き詰められていることの方経済的にも安全面でも問題である。


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→加えて以下は2016年12月時点の豊洲市場の大気環境データであるが、この時点で当然大気に汚染の影響は全く出ていない。もちろん地下水を食品に対して使用する予定もなく、さらに土壌はコンクリで遮断されている。つまり食の安全は完璧に確保されている。したがって伊藤ゆう都議の発言は、完全に間違っており、むしろ「地下ピットをなくしてリスクを高めろ」というようにすら受け止められるものである。

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→それにもかかわらず、伊藤ゆう都議は川松都議の発言に対して「問題発言だ」と脅すような言動を取っている。これは議員としてまことに不適切であろう。



以上のように伊藤ゆう都議の発言はありとあらゆる意味で、間違っており、肯定できない。このような議員が都議会の場で仮にも市場問題を所管する経済港湾委員長を務め、また、都議会最大会派の政調会長代理を務めているということは都民にとって不幸というほかないと、私個人としては考えるところである。

もし異論があるならば本人からの反論を期待したい。

ではでは今回はこの辺で。