ども宇佐美です。
東京、大阪で要請に応じず休業しないパチンコ店が問題になっています。
パチンコ店が休業要請に応じない理由としては多分大きく以下の3つであげられると思います

セーフティネット保証の対象外で、融資が受けにくく、つなぎ資金に不安がある
②他の店が休んでいる中、自分の店だけが営業すれば客が集中して繁盛する
③そもそもパチンコ業界が長期不況で、閉店時期を模索している事業者は怖いものがなくなっている

より本質的な問題は上記のうち②、③なのでしょうが、今回取りあげたるのはこのうち①の論点についてです。

セーフティネット保証は、経営の安定に支障をきたしてる中小企業が市町村の認定を受けることで信用保証協会から通常時の枠とは別枠で2.8億円まで保証をしてもらえる制度ですが、ほとんどの業種がこの対象になる中、パチンコ業界その他の風営法業種は指定の対象外になっています。

これはパチンコ業界に言わせれば「我々は職業差別を受けている。今回休業要請に応じられないのはその問題が背景にある」ということになるわけですが、彼らのためにも私の霞ヶ関の経験を踏まえてなぜこのようになっているのか、という制度的な話をしておきたいと思います。

各省庁の任務を定めた法律を一般に「設置法」というのですが、各省庁の設置法では業振興規定というものがありましす。例えばいくつか紹介しますと

経産省設置法には「商鉱工業の発達及び改善に関する基本に関すること」「所掌に係る事業の発達、改善及び調整に関すること」という規定が、
農林水産省設置法には「食品産業その他の所掌に係る事業の発達、改善及び調整に関すること」という規定が、
国土交通省設置法には「不動産業の発達、改善及び調整並びに不動産取引の円滑化及び適正化に関すること」という規定が

あり、各省庁はこれらの規定に基づいて縦割りで役割分担して所管業種の振興(いわゆる産業政策)を推進しています。

他方経産省は「中小企業」という業種にとらわれない視点(=横割り)で、中小企業振興制度を作っているのですが、実際に業務を進めるには結局各省庁の縦割り的な役割分担が必要になります。その時に根拠となるのがこの業振興規定で、経産省は日本標準産業分類と照らし合わせながら各省庁と相談して所管の区切りを決め、役割分担し、協力しながら制度設計をしていきます。

逆に言えばこういった業振興規定がない業種は中小企業の振興政策から漏れていくことになり、支援政策が手薄になります。それが今回セーフティネット保証の対象外となっている業種でして、具体的には金融庁の所管業種、警察庁の所管業種ということになります。

金融庁は金融庁設置法に基づいて、警察庁は警察法に基づいて、設置されているわけですが、これらの法律には業振興規定がありません。したがって、中小企業政策上は「この二省庁の所掌業種は特段振興されるべき業種ではない」と扱われ、支援は一般的な支援のみで、セーフティネット保証のような一段の深掘りの支援は適用されない整理になっていますました。(追記3参照)

パチンコ業界は風営法に基づいて警察庁に所掌される業種なのは言わずもがなですから、必然的に他の風営法業種同様、基本的には今回の一連の緊急中小企業政策の対象外となる、というわけです。仮にパチンコ業界が他の産業並みの支援を希望するなら、本来制度的には「パチンコ業法」のような法律を作って、警察庁所掌の風営法業種から脱する必要があります。それは他の風営法業種も一緒です。(追記2,3参照)

私が信用保証制度をいじくったのはもう15年前のことになりますが、おそらくこうした制度思想は今でも変わっていないでしょう。「パチンコ業法」構想については古くから議論はありますが、当面実現化する見込みはありませんから、パチンコ業界はこのコロナ禍の中の苦境を現状のまま生き抜いていくことを余儀なくされることになるのだと思います。

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*追記(4/25 20:37):他方で業界内部では「パチンコもセーフティネット保証の対象になる」との噂もあるので、中小企業政策の根本的な哲学が変わりつつある可能性もあるようです。。。私もこの論点に関しては「昔の人」になりつつあるのかもしれません。。。。
https://twitter.com/qxqxqxaquas/status/1253810744182759424

*重要追記2(4/25 20:37):上記のように書きましたが、現行法制のままでも「そもそもパチンコ業界は経産省と警察庁の共管業種」と再整理してしまえばパチンコ業界にセーフティネット保証を適用できることに気づきました。これは技術的には簡単なのですが、パチンコ業界と霞ヶ関の関係に不可逆的な大きな政治的変化をもたらすことになります。警察庁としては利権を手放すことにつながり抵抗があるでしょうが、パチンコ業界としても背に腹は変えられないので、こういう方向で議論が進むことになるような気がします。この点について時間があれば深掘りしてみたいところです。

*重要追記3(4/25 23:00):とか言ってたら、パチンコ業種を必要な調整を行った後にセーフティネット保証に含めるとの方針が出されてました。政府内でなんらかの調整が行われたものと思われます。なお飲食を提供するクラブは農水省共管と整理されたものと思われます。

https://www.meti.go.jp/press/2020/04/20200424008/20200424008.html?fbclid=IwAR0ab_xd_WvvSQtyJEeStA8p8gZ9p4l-wFiY_KQjzScxNY1GCN31ParyNu0
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パチンコ業界の方はこの辺の実務的な理屈をご存知ない方が多いようなので、参考までにまとめてみました。
ではでは今回のこの辺で。